今回は、クチコミマーケティングの科学についてご紹介します。インターネットやSNSが普及してから、消費者一人ひとりの情報発信が容易になり、企業のマーケティング戦略において「口コミ」の重要度は年々高まっています。
- 「インスタで友達が褒めていたからつい買ってしまった」
- 「Amazonのレビューが高評価だったので選んだ」
- 「X(Twitter)で話題になっているのを見て気になった」
このように、日常的にクチコミの影響を受けている方は多いのではないでしょうか。今回の内容は、論文「クチコミの促進要員に関する先行研究の整理と今後の研究課題(臼井浩子 2014年)」を参考にしており、そのエッセンスをわかりやすく整理しています。また、実際の事例も交えて口コミが生まれるメカニズムと、マーケティングへどう活かすかをご紹介していきますね。
1. クチコミの主な動機3つ:製品関与・自己関与・他者関与

まずはクチコミが起こる代表的な動機を3つに分けて見ていきましょう。
1-1. 製品関与(感情の発散)
商品やサービスを利用して「思ったより良かった」「期待外れだった」という強い感情を抱いたとき、人は誰かにその体験をシェアしたくなります。たとえば、レストランで想像以上に美味しい料理を味わえば「ぜひ行ってみて!」とポジティブな口コミを書きたくなるし、逆に期待を下回った場合は「ここは微妙だった」というネガティブな評価を投稿することも。企業にとっては嬉しい面と怖い面があるクチコミと言えるでしょう。
1-2. 自己関与(自己高揚)
「自分はこんな専門知識を持っている」「こんな素敵な買い物をした」というアピール欲求から生まれるクチコミです。最近では、SNSで旅行先の写真や新作コスメ、ファッションアイテムをシェアして多くの「いいね!」をもらうことで満足感を得るケースが多いですよね。いわゆる“映え”を狙う投稿や、ガジェット好きがマニアックなレビューを発信するのも、自己高揚のモチベーションによるものです。
1-3. 他者関与(他者への配慮)
「これから買う人の参考になれば」「企業を応援したい」という他者配慮からのクチコミも重要です。特に学習塾や英会話、旅行先のホテルなど、実際に試してみないとわかりにくいサービスは、リアルな口コミが購入意思決定に大きな影響を与えます。また、「この商品や会社は本当に素晴らしいから、多くの人に知ってもらいたい」と思う熱心なファンによるクチコミも、企業にとって非常に力強い味方です。
2. クチコミを取り巻くその他の要因
上記の3つの動機以外にも、クチコミが発生・拡散する際の要因は複数あります。ここでは代表的なものを紹介します。
2-1. メッセージへの興味(メッセージ関与)
企業の広告やキャンペーン自体への賛否や議論がクチコミとして広がることがあります。SNSで「炎上」したり、「バズ」したりするケースがこれに当たります。有名な例として、「100日後に死ぬワニ」という漫画が最終回に大量の商品コラボを発表し、一気に批判が殺到した件は記憶に新しいですよね。広告や販促メッセージがユーザーの反感を買うと、ネガティブな形で話題になってしまう可能性があるのです。
2-2. 不確実性の低減
商品やサービスが「事前に品質を判断しにくい」ほど、口コミを探す人が増えます。保険サービスや英会話教室、旅行先のホテルなど、高額で体験しないとわからないものは特にその傾向が強いです。購入前の潜在顧客がクチコミを調べる背景には、「失敗したくない」「他の人はどう感じたの?」といった不安を解消したい気持ちがあります。
2-3. アドバイス探索
購入後の使い方やトラブルシューティングなどを知りたい人が、コミュニティやレビュー欄で意見交換をすることもクチコミの一種です。たとえば、スマートウォッチの機能設定方法を詳しく教えてくれるブログやSNSの投稿は、同じ製品を持つユーザー同士の助け合いとして重宝されます。
2-4. 不協和の低減
購入後に「本当にこれで良かったのか?」と自問する時、その気持ちを落ち着かせるために他人の意見を求める心理があります。これを認知的不協和の低減とも呼びます。特に高額な商品やサービスを購入したとき、人はどうしても「大丈夫だったかな?」と不安になるため、同じアイテムを買った人のレビューを読んで安心したりします。
2-5. 経済的インセンティブ
アフィリエイトや企業からの依頼案件など、報酬を得る目的でクチコミを発信するケースも増えています。インフルエンサーに企業が宣伝を依頼し、商品や金銭的なサポートを提供する「PR投稿」などが代表例です。こうした動機の場合でも、有益な情報や魅力的な写真を提供していれば、受け手はポジティブに捉えることも多いでしょう。
3. クチコミマーケティングの事例
ここでは、実際にクチコミをうまく活用した企業の例を挙げます。
王道な事例ですが、スターバックスでは新作ドリンクや季節限定のメニューが出るたびに、多くのユーザーがインスタやTwitterに投稿し、それがさらに話題を呼ぶという好循環が生まれています。美味しそうな写真と「今回の新作はめちゃくちゃ美味しい!」という率直な感想が組み合わさり、フォロワーや友人たちの購買意欲を刺激します。
もう1つは、家電量販店での「購入者のレビュー提示」です。パソコンや高性能の家電は決して安くないため、購入者は「後悔したくない」と思って口コミを探しますよね。店頭のポップに実際のレビューや星評価が明示されていると、安心材料となり購買を後押しします。
4. クチコミマーケティングを成功させるポイント
では、企業はクチコミをどう活用すればよいのでしょうか。大きく3つのヒントをご紹介します。
- ユーザーにポジティブな体験を提供する:製品やサービスの品質だけでなく、カスタマーサポートや接客も含めて感動体験を作ることで、ユーザーが自発的に良い口コミを書きたくなる土壌を作ります。
- 自己発信しやすい仕組みを用意する:SNSと連動したキャンペーンや、インスタ映えする写真スポットなど、「自分の体験をアピールしたい」という心理をくすぐる工夫を施します。
- ユーザー同士で助け合えるコミュニティを整備する:公式SNSでのリポストや、ファン同士が交流できるオンラインコミュニティを作ることで、他者関与型のクチコミ(役立ちたい、応援したい)がどんどん増える可能性があります。
いずれの場合も、ネガティブな口コミが発生した時の対応が非常に大切です。誠実かつ迅速なサポートを行うことで、企業への信頼を高めるチャンスにもつながります。
まとめ:クチコミの科学をマーケティングに活かす
この記事では、クチコミマーケティングの中心にある「なぜ人はクチコミをするのか?」というテーマを掘り下げました。主な動機として、
- 製品関与(感情の発散)
- 自己関与(自己高揚)
- 他者関与(他者への配慮)
の3つがあり、それらを取り巻く要因として「メッセージへの興味」「不確実性の低減」「アドバイス探索」「不協和の低減」「経済的インセンティブ」が存在します。これらを理解することで、ポジティブな口コミを増やす施策や、ネガティブな口コミ対策のヒントが得られるはずです。
クチコミの力を最大限に引き出すポイントとしては、ユーザーが発信しやすい環境を整備しつつ、誠実なブランドイメージを築くことが欠かせません。良い口コミが自然に増えていけば、新規顧客を獲得しやすくなり、既存顧客とのエンゲージメントも高まります。ぜひ自社のマーケティング施策に活かしてみてください。
参考文献
- 臼井浩子 (2014) 「クチコミの促進要員に関する先行研究の整理と今後の研究課題」