普段の生活のなかで、「どれを選ぼうか」と迷うことはありませんか?たとえば、ネットショッピングで何十もの類似商品を見ているうちに、結局どれも決められず時間だけが過ぎてしまった経験はないでしょうか。こうした「選択肢が多すぎて決められない」状態を説明するのが、心理学で知られる「ジャムの法則」です。この記事では、ジャムの法則の概要とその実験、日常生活やビジネスへの活用方法について、なるべくわかりやすく解説していきます。
ジャムの法則(選択回避の法則)とは?
ジャムの法則は「選択肢が多すぎると、かえって人は決断を避けるようになる」という心理学の原則です。別名「選択回避の法則」あるいは「選択のパラドックス」と呼ばれることもあります。たくさんの選択肢が用意されていると、一見便利そうに思えますが、実際は「最適なものを選びたい」というプレッシャーが強まり、逆に選ぶこと自体を先延ばしにしてしまうことがあるのです。
有名なスーパーマーケットの実験

ジャムの法則という名前は、コロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授による1995年の実験から広まりました。アメリカのスーパーマーケットでジャムの試食ブースを出し、時々で置くジャムの種類を変えたのです。あるときは24種類という豊富なバリエーションのジャムを並べ、別のときは6種類だけに限定しました。その結果、意外なことに、ジャムの種類が少ない方が、はるかに購入率が高かったのです。
この実験は「選択肢が多ければ購買意欲が高まるはず」という従来のイメージを覆し、「実は選択肢が増えすぎると、人はかえって決められなくなる」という事実を示しました。私たちは自由が多いほど幸せに感じると思いがちですが、多すぎる自由は“迷い”や“後悔”を生む原因になることがあるのです。
なぜ選択肢が多いと選べなくなるのか

人が多くの選択肢を前にすると、次のような心理的要素が働きます。
- 最適解へのプレッシャー
選択肢が多いほど、「より完璧なものを選びたい」という欲求が強くなります。どれが自分にぴったり合うのかを探すために時間をかけすぎたり、決めきれなくなったりするのです。 - 後悔や不安の増大
たくさんの選択肢があると、決断後に「他のもののほうが良かったのでは?」と後悔する可能性が高まります。後悔や不安を避けるために、そもそも選択しないままになってしまうこともあります。 - 認知リソースの限界
人が一度に処理できる情報量には限界があります。選択肢が多すぎると、情報を十分に比較・整理するだけでも疲れてしまい、頭がオーバーヒートして意思決定を先延ばしにしてしまうのです。
日常生活での事例:メニューやネットサービス選び
日常的にも、ジャムの法則が働いている場面は多くあります。たとえば、外食をするときにメニューが分厚いお店だと、何を選ぶかに時間をかけてしまいませんか。さらに、動画配信サービスや音楽サービスなど、数えきれないほどの作品や曲が並んでいると、何を再生するか迷って結局同じ作品ばかり観てしまう、というケースもよくあります。
もし「洋服を選ぶのに毎朝30分かけてしまう」という人がいれば、クローゼットの服をある程度絞ることで決断の手間を減らし、生活に余裕を作ることができるでしょう。食事の献立も、あらかじめ一週間分ざっくり決めてしまえば、スーパーでの買い物や毎日の「何を食べるか」問題に悩む時間を削減できます。
マーケティングでの活用:選択肢を絞る勇気
ビジネスの現場でも、ジャムの法則をうまく活かすことができます。商品やサービスの選択肢を増やすだけでは、かえって顧客の決断を遠ざける可能性があるからです。たとえば、オンラインショップで何十というプランやオプションを一度に提示すると、顧客は「どれが自分に合うのだろう」と悩みすぎて、購入自体をやめてしまうかもしれません。
そこで、思い切ってプランを3種類程度に絞ったり、人気商品を分かりやすく目立たせたりすると、顧客は迷いにくくなります。また、それぞれの選択肢がどう違うのか、価格や特徴を簡潔に提示するのも重要です。「選びやすくまとめる」ことは、顧客の心理的なハードルを下げ、購買行動を後押しします。
さらに、店舗のメニューも同様です。あまりにも種類が多いと、お客さんは「読んでいるだけで疲れる」という状態になるかもしれません。人気ランキングやおすすめセットなど、少ない候補を明確に示すことで、注文しやすい環境を作ることができます。
「選択肢を減らす」ことはデメリットなのか?
「選択肢を減らす」というと、魅力や自由度を損なうイメージを持つかもしれません。しかし、実際には顧客の満足度を高める効果が期待できます。自分に合った商品やサービスをすぐに見つけられたとき、人は「いい買い物をした」「ラクに決められた」というポジティブな感情を抱きます。その結果、また同じ店を利用しようというリピート意欲にもつながりやすいのです。
ジャムの法則(選択回避の法則)は、「多すぎる選択肢が人の意思決定を妨げる」というシンプルながら重要な心理学の知見です。選択肢を豊富に用意しているつもりでも、かえってユーザーや顧客の迷いを増やしてしまう場合があるのです。
- 選択肢が多すぎると決断しにくくなる
- 適度に選択肢を絞ると顧客の満足度が向上する
- 日常生活でも「選ぶ負担」を軽くすることで時間とエネルギーを節約できる
以上のポイントを意識するだけでも、日常の些細な選択から大きなビジネス戦略まで、よりスムーズに決められるようになります。ジャムの法則を念頭に置いて、選択肢を見直し、私たちが「心地よく決められる」環境づくりを心がけてみてはいかがでしょうか。