tea’stoneに学ぶ中国茶ブランディング|日本茶にも可能性はあるか

teastone

今回は、「中国茶のスタバ」とも呼ばれる中国茶カフェブランドtea’stoneについて考えてみましょう。

2年ぶりに上海を訪れ、新天地の店舗を実際に体験して感じたのは、「中国茶のスタバ」という言葉だけでは少し足りないという印象でした。コーヒーを日常にしたスターバックスに対し、tea’stoneは中国茶を「特別な体験」として再定義している。ここに、このブランドのマーケティングの核心があると考えました。

伝統を尊重し若い世代に開いた中国茶体験

tea’stoneの店舗に入ってまず感じるのは、中国茶特有の堅さや敷居の高さが巧みに取り払われていることです。新中式の空間は落ち着きがありながらも現代的で、若い層が自然に足を運びたくなる雰囲気をつくっています。

一方で、伝統を単純化しているわけではありません。600種類以上の茶葉を並べた茶葉サンプルウォールや、産地・風土・香りを視覚的に整理した展示は、中国茶の奥深さをむしろ強調しています。ただし、その伝え方は「知識」ではなく「体験」です。詳しくなくても選べる設計が、文化的ハードルを大きく下げています。

「過ごす」を設計した空間戦略

tea’stoneのマーケティングで特に印象的なのが、空間そのものをメディアとして設計している点です。200〜500㎡規模の大型店舗、外摆(テラス)を含む開放的なレイアウト、あえて見せる抽出カウンター。どこを切り取っても「体験」が成立する構造になっています。

唐代の煮茶器具から現代的な抽出機器までを一続きで配置することで、中国茶の歴史を説明なしに理解させる。この「語らずに伝える」設計は、写真映え以上の価値を生んでいます。空間に身を置くこと自体が、ブランド理解につながっているのです。

高価格でも成立する理由は「体験価値」にある

tea’stoneの茶飲料は決して安くありません。それでも支持されているのは、単なる一杯の飲み物ではなく、「一人一杯の体験」として提供されているからです。おかわりを前提としない設計や、回転を意識した空間づくりは、カフェというより現代型の茶体験に近い。

文化、空間、商品、そして会員化・再購買までが一連の体験として設計されており、店舗はゴールではなく入口になっています。この統合設計が、ブランドとしての強度を生んでいます。

日本茶への応用と、まだ眠っている可能性

このtea’stoneのモデルは、日本茶にも応用できると感じました。ただし、日本茶は中国茶とは異なる課題を抱えています。日本茶は日本の家庭の日常に深く入り込みすぎており、日本人にとって「特別なもの」として認識されにくい側面があります。

一方で、最近は日本茶ミルクティー専門店の登場など、あえて非日常性を演出することで再注目される動きも見られます。これは、tea’stoneが行っている「再定義」に近い現象だと思います。

海外に目を向けると、抹茶の人気はさらに高まっています。ただ、多くの場合、抹茶は甘いスイーツの文脈で消費されており、日本茶文化全体への理解にはつながっていません。だからこそ、煎茶やほうじ茶など、抹茶以外の日本茶をどう体験として翻訳するかが重要になります。適切にブランディングできれば、まだ大きなビジネスチャンスが眠っていると感じます。

tea’stoneは、中国茶を「若くした」のではなく、「現代の都市生活者向けに再編集した」ブランドです。この視点は、日本茶を次のフェーズに進めるうえで、非常に示唆に富んでいると思います。